販路は人に頼らない
2007年。夏まで、AppleのiTunes Storeで売られていた米NBC Universalのテレビ番組が、9月1日から姿を消してしまった。契約更新のときにNBC側が前の2倍以上の4.99ドルの販売価格にしろといったもんで、結局折り合いがつかなくて契約が打ち切られたらしい。iTunes Storeは、ABCやCBS、FOXなんかのそのほかの局とは前のままの販売価格1.99ドルの契約をしたんだけど、なんといってもNBCの番組は人気番組ベスト10の中に3つ入るほど目玉商品が多かったし、おまけにiTunesで売られているテレビ番組の30%もあったんだからキツイよねぇ。
NBCはiTunesから引き上げた自分とこの番組を、9月10日からAmazon「Unbox」で配信すると発表したのだ。ついでに「HEROES/ヒーローズ」とか、Chuck、 Journeyman、Life、30 Rock、新シリーズのバイオニックウーマンのパイロット版をAmazon「Unbox」のユーザに無料公開しちゃった。NBCの番組はテレビで放映された番組は次の日から見られるようになる。値段は1作品1.99ドルでiTunesと同じ、しかもフルシーズンのパックなら30%引きになるという気前の良さ。値段が上がらないからiTunesの契約を断ったなんて嘘っぱちだよねぇ。
これだけじゃなくて NBCはそれまでYouTubeで宣伝ビデオを見せてたんだけど、それを削除したって10月22日に発表した。YouTubeには2006年6月からNBCの公式チャンネルをのせて、ドラマや「Saturday Night Live」「The Tonight Show」みたいな看板番組の予告や宣伝ビデオをみせてて、逆にYouTubeに投稿された動画を「The Office」の中で紹介して「相互宣伝のモデルだ! すごいじゃん」ていわれていたのにあっさりやめちゃった。つまり全部アマゾンでみなさいってことになるわけね。
NBC UniversalがiTunes StoreやYouTubeとの契約しなくてよくなったのは、実は News Corpてとこと組んで動画サイトを立ち上げて、自分でインターネット使ったコンテンツ配信やろうとしている計画があるのだ。
その新サイトHuluは、「YouTube対抗」サイトといわれているらしいけど、ちゃんと編集された番組を10分で切らないで流すんだからYouTubeよりすごいんじゃないかな。YouTubeどうするかな。Rocketboomみたいになっちゃわないかな。アマンダ・コンドンいなくなちゃったし。アンドリューいさかいしちゃだめだよ。でも株を49%も渡したのは気前いいよね。
Huluは、2007年10月29日オンラインビデオサービスのベータ版を公開して会員を集めはじめた。これがものすごい徹底ぶりでホンマカイナと思うほどなのです。
Fox ネットワーク、MGM、Sonyピクチャーとも提携したから、 NBC/Universal、FOX、MGM、Sony Pictures Televisionのハリウッド4大スタジオが参加することになってこりゃもう独り占め状態だ。残ってる大手はワーナーブラザーズとパナマウントじゃないの。
でも目が ($_$)になってるNBCは物足りないらしく、だめ押しに BNET、Bravo、CNET、Comedy Time、E! Entertainment Television、Ford Models、Fox Atomic、Fox Reality、FX Networks、FUEL TV、G4、Golf Channel、IGN、Movieola、National Geographic、Oxygen、SPEED、Sundance Channel、Sci Fi Network、The Fight Network、The Style Network、X17 Online、USA Network、Versusなんていう全然覚えられないほどのケーブルテレビと配信の話をつけたのだ。ゴルフ、野球、バスケット、アメフトなどのスポーツチャンネルをごっそり集めたから生中継でワクワクして見る番組も盛り沢山なのだ。生中継なら「Tivoで録画してCM飛ばし」は押さえられるからね。
こんなに集めてどうするのって心配があるけど、Huluは集めに集めた動画を、配信パートナーのAOL、Comcast、MSN、MySpace、Yahoo!などを通してインターネットで配信しちまうのである。cf. Investor's Business Daily
つまりNBCは、もともとテレビ局で映画会社だっんだけど、映画や放送だけでなくてインターネットでも自分の番組や映画を自分で配信するつもりになったということなのね。いままで溜め込んだから資金力はあるし、映画とテレビ界では影響力はバッチリだし、そこらの新興のベンチャーじゃ全然できない大規模な立ち上げをするつもりになったのだ。
ハリウッドをほとんど押さえて、テレビネットワークを2つもおさえて、CATVが蓄えてたスポーツやドキュメンタリー番組を押さえて、これからの生中継も押さえて、こりゃとことんコンテンツを集めて商売するつもり以外ないじゃないの。
インターネットビジネスで一般的だったモデルは「小さく初めて大きく育てる」だったけど、Huluは、「でっかく初めてがっぽり稼ぐ」って手法で真正面から「圧倒的」戦略をぶつけてきたのだ。新興ベンチャーでない、従来型のビジネス文化を持った企業から生まれた Huluがインターネットで成功すれば、「そうか、そういうのがあったか」と資金豊富な大企業が同じやりかたでインターネットに参入してくるのは当たり前っちゃ当たり前だから、こりゃえらいこっちゃ。
「Huluが成功する可能性は低い」と見ているアナリストの意見もあるけど、資金と人材はベンチャー企業の最初のハードルだから、それをすでに持っている大企業がどのようにビジネスを進めるか、ベンチャーの活気を持ってインターネットで先行し展開している YouTubeやVeoh Videoなんかが、お金持ちじーさんベンチャーにどう対処するのか、買われちゃうのか、ユーザはどう見てどう動くか、こりゃしばらく眼が離せない。
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